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【ポイント解説!】オリンピックの正式種目にもなったスポーツクライミングとは?ボルダリングと何が違う?

ロープクライミング(スピードクライミング)を終えて降りる女性

2021年開催の東京オリンピック、2024年開催のパリオリンピックでは、新しい種目として「スポーツクライミング」が採用され、多くの人がこのスポーツを知るきっかけとなったのではないでしょうか。

でも「詳しく知らない」「ボルダリングと何が違うの?」という方も多いのではないかと思います。

そこでこの記事では、最近よく耳にする「ボルダリング」との違いと合わせて簡単に解説していきます!

1.スポーツクライミングとは?

(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会(以下、JMASCA)によると、スポーツクライミングとは、国際スポーツクライミング連盟(以下、IFSC)が認定する公式の協議会で行われる「リードクライミング」「ボルダリング」「スピードクライミング」の3種目を指します。
そうです。ボルダリングはスポーツクライミングのうちの1種目だったんですね。

2.スポーツクライミングの種類

そもそもの始まりは、自然の岩を登って楽しむ「ロッククライミング」です。
ロッククライミングは、縄ばしごのような道具(アブミ)などを使用する「エイドクライミング」と、道具を使用しないで自力で登る「フリークライミング」に大別されます。

縄ばしごを使用したエイドクライミングを行う女性

また、フリークライミングは、命綱としてのロープを使用する「ルートクライミング」と、ロープを使用しない「ボルダリング」に分けられます。

さらに、ルートクライミングには、支点を自分で確保しながら登る「リードクライミング」と、ゴール付近に支点が確保されている「トップロープクライミング」の2種類があります。

トップロープスタイルのロッククライミングを行う女性

スピードクライミング」を項目別にするとすれば、トップロープクライミングにあてはまります。

ボルダリングとリードクライミングは、趣味としても広く楽しまれていますが、スピードクライミングは競技用の性格が色濃いようです。

2-1.リードクライミングとは

ハーネス(拘束具)を装着し、ロープを岩や壁に設置された支点に確保しながら登るスポーツが「リードクライミングです。

ビレイヤーという、クライマーの生命線となるロープを確保する人と対になって行われます。
「ハーネスもロープもうっとうしい!」という人は、断崖絶壁を1人で登ります。
フリーソロ」という映画がありますが、これです。

ヤバいですね。

スポーツ競技では、高さ12m以上の壁で、最長60手程度のコースをどこまで登れたか、その高度を競います。

国内にも、リードクライミングやトップロープクライミングのできる施設は多くあります(集計中)。

2-2.ボルダリングとは

道具もロープも使用しないボルダリング」の語源は、「大きな石ころ」という意味の“boulder”です
語源の通り、山などに転がる大きな岩を登り切って雄たけびをあげるスポーツです。

上半身裸でボルダリングの語源となる自然岩を登る男性

ボルダリングジムなどの施設では、人口の石(ホールド)が設置された高さ2~3m程度の人口壁を登ります。
JMSCAによると、高さ5m以下(体の一番下の部分からマットが高さ3m以下)の壁を登る競技と定義づけられています。

自然の岩にもジムにも、スタートとゴール(トップ)の位置(課題)が設定されており、それぞれの難易度を選んで登りきるスポーツです。
大会では、途中地点の「ゾーン」や「トップ」に届いたトライ数で競われます。

ボルダリングジムでヒールフックを使用してボルダリングをしている男性

競技としての大会も盛んに開催されていますが、登れない課題に何度もチャレンジして完登を目指す「自分との闘い」を魅力に感じる人が多いのではないでしょうか。

何よりジムの場合は、ほとんど身ひとつで登れるという点が最大の魅力だと思います。
チョークとシューズはレンタルして、着のみ着のまま登ってそのまま帰る、という人であれば手ぶらでOKです。

2023年4月1日から日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)が、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が使用する国際的な呼び方に統一するため、「ボルダリング」という呼び方から「ボルダー」に変更しました。

ただ「ボルダー」と呼ばれるのは公式な場面くらいで、一般的には引き続き「ボルダリング」の呼称が愛されています。

ちなみに国内47都道府県すべてに、ボルダリングのできる施設が約700あります。

2-3.スピードクライミングとは

ボルダリングとリードクライミングが、趣味と競技両方で親しまれているのに対し、競技色が強い種目が「スピードクライミング」です。

トップ付近に支点を確保したトップロープスタイルで、スタートからトップまでの速さを競います。

2015年に放映された「SBI FXトレード」のCMで、ワールドチャンピオンのダニエル・ボルディヤフ選手が実力を披露していますね。

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国内にスピードクライミングのできる施設は少なく、2021年の東京五輪でスポーツクライミングの採用が決まったことをきっかけに増えているようです。

そのため、日本選手は他国選手と比べると、スピードクライミング種目は苦手な傾向にあります。
今から「スピードクライマー」としての道を目指すのも遅くないかもしれません。

3.スポーツクライミングの歴史は?

JMSCAによると、スポーツクライミングが初めて正式な大会で行われたのは1989年と最近で、間もなく1991年に世界選手権が始まったようです。

第1回の世界選手権では、レジェンドとうたわれる平山ユージ氏が銀メダルを獲得し、その後も日本選手は様々な世界大会で結果を残しています。

そして、2021年開催の東京オリンピックと2024年開催のパリオリンピックでは、スポーツクライミングが追加種目として採用されました。
追加種目は、開催国の提案により、その大会でだけ行われるもののため、オリンピックでスポーツクライミングが行われるというのはレアかもしれません。

4.どんな大会がある?

国内外問わず、様々な協議会や大会が開催されていますが、スピードクライミングを含めた大会は限られます。
大きな大会は、IFSCが主管の「ワールドカップ」と「世界選手権」です。

2019年の世界選手権は東京の八王子市で開催され、「リードクライミング」「ボルダリング」「スピードクライミング」に加え、3種目の総合得点を競う「複合(コンバインド)」が行われました。

男子は、楢崎智亜(ならさきともあ)選手がボルダリングと複合それぞれで1位、女子は、野口啓代(のぐちあきよ)選手がボルダリングと複合それぞれで2位、森秋彩(もりあい)選手がリードで3位を獲得する快挙を遂げました。

IFSC大会でボルダリング競技を行う野口啓代選手
出典:Ifsc climbing

オリンピック種目としてスポーツクライミングが採用されるのは、2021年の東京五輪が初めてでした。
その後、パリ五輪でも東京五輪と同様に追加競技の枠で行われましたが、2028年のロサンゼルスオリンピック以降は正式競技として実施されることが決まりました。

国内では、JMSCAが主催するジャパンカップが大きな大会で、「リード」「ボルダリング」「スピード」「コンバインド(複合)」が行われています。
コンバインドは2018年に、スピードは2019年に初めて開催されており、東京オリンピックを意識しての新設だったと推測できます。

ちなみに、2019年の八王子世界選手権では、5900万円の赤字となったことが発表されました。
クライミング業界振興のため、興味があってスケジュールが合う方は、是非大会会場に足を運んでみましょう!

5.東京オリンピックの開催日と開催場所は?

2021年開催の東京オリンピックでは、「リード」「ボルダリング」「スピード」の複合種目のみが行われました。

東京都江東区の「青海アーバンスポーツパーク」に仮設された会場で、8月4日に男子予選、5日に女子予選、6日に男子決勝、7日に女子決勝と、非常にタイトなスケジュールで行われ、全世界を熱狂させました。

6.日本の代表選手は?

東京オリンピックには、男子は楢崎智亜選手原田海選手、女子は野口啓代選手野中生萌選手が出場しました。

女子は野中選手が銀メダル野口選手が銅メダルと日本勢の強さを見せつけ、楢崎選手は惜しくも4位入賞という結果になりました。

また、2024年に開催されたパリオリンピックでは、リードとボルダーの複合とスピードの個別種目に分割され、合計2種目になりました。

男子は東京に引き続き楢崎智亜選手と新鋭の安楽宙斗選手が、女子も引き続き野中生萌選手森秋彩選手が出場しました。

結果、安楽選手が複合で銀メダルを取得、森選手が4位に入賞しています。

IFSC大会でボルダリング競技を行う楢崎智亜選手
出典:Ifsc climbing

2025年11月現在の注目選手は以下の通りです。

男子:楢崎智亜(ならさきともあ)、安楽宙斗(やすらそらと)、楢崎明智(ならさきあきとも)、天笠颯太(あまかさそうた)、山口賢人(やまぐちかとう)、土肥圭太(どひけいた)

女子:野中生萌(のなかみほう)、森秋彩(もりあい)、伊藤ふたば(いとうふたば)、中村真緒(なかむらまお)、松藤藍夢(まつふじあいむ)、関川愛音(せきかわあおね)

7.世界の代表選手は? 

一方で、強豪国日本に負けじと立ちはだかる世界の代表選手もたくさんいます。

なかでも、女子でスロベニアのJanja Garnbret(ヤンヤ・ガンブレット)選手は、2025年のソウル世界選手権でもリードで1位を獲得し、他を寄せ付けませんでした。
パリ2024でも圧倒的な強さを見せた彼女は、2028年ロサンゼルス五輪でも強敵になること間違いなし。注目度No1の選手です。

ちなみに「ヤーニャ」とする訳もあれば、「ヤンヤ」とする訳もあります。 筆者は語感が好きなので、ヤーニャと呼んでいます。

IFSC大会でボルダリング競技を行うスロベニアのJanja Garnbret(ヤンヤ・ガンブレット)選手
出典:Ifsc climbing

他にも、ボルダーであれば、Annie Sanders(アニー・サンダース)選手Oriane Bertone(オリアン・ベルトーネ)選手Naïlé Meignan(ナイレー・メニャン)選手が注目株です。

男子は、2025年の世界選手権でリード1位を獲得した韓国出身のLee Dohyun(イ・ドヒョン)選手が1番の注目株です。

男子は日本選手含めて実力が拮抗しており、大会ごとで結果が異なり見ごたえがあります。
世界選手権でリード3位、ボルダリングとコンバインド2位を獲得したAlberto Ginés López(アルバート・ヒネス・ロペス)選手や、リード2位を獲得したChaehyun Seo(ソ・チェヒョン)選手らが、2028年ロサンゼルス五輪でも活躍しそうです。

8.まとめ

いかがでしたか?
スポーツクライミングとは何か、概要を把握できたでしょうか?

この知識を糧に、良いクライミングライフをお過ごしください!